コミュニティ女子meeting! vol.2 イベントアーカイブ(1/3):西山芽衣さん

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2018年3月13日、シェア型複合施設「the C」にて「コミュニティ女子meeting! vol.2 〜コミュニティ作りのしごと〜」が行われました。

前回のvol.1に続き、コミュニティの現場で働く女性たちによるトークイベントです。

登壇者からの現場の生の声を聴くことで、参加した皆様に「コミュニティを作るってどういうことなだろう?どんな役割があるんだろう?」というイメージを持ってもらうことをゴールとして開催しております。

 

 

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今回登壇したコミュニティ女子は3人。それぞれが現場で経験してきたこと、感じたことを、スライドとともに語ってもらいました。

「ミュニティ女子meeting! vol.2」のトーク内容は、全3回のレポートに分けてお届けしたいと思います。

コミュニティ女子meeting! vol.2 登壇者

モデレーター:平賀めぐみ(BUKATSUDO/株式会社リビタ)

チャレンジと実験を通して、街をハッピーにしていく:HELLO GARDEN/西千葉工作室 西山芽衣

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西山芽衣(にしやま・めい)
1989年、群馬県生まれ。千葉大学建築学科卒業後、企画プロデュースを行う(株)北山創造研究所に入社。まちづくりなどに携わる中で、西千葉という街で「HELLO! GARDEN」「西千葉工作室」を企画・立ち上げを行う。プロジェクトを企画するだけでなく、運営にも関わりたいと思い、2014年同社を退社。西千葉に密着で企画・研究を行う(株)マイキーに入社。西千葉に暮らしながら「HELLO GARDEN」「西千葉工作室」の運営を行う傍ら、各地のまちづくりプロジェクトのアドバイザーとしても活動。

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※以下、西山さんのトーク内容です。注釈がない限り、話し手はすべて西山さんによるもの。

日常の中にある「あたりまえ」をより良くしていきたい

今日は西千葉という街から来ました。

その街で活動していると、「千葉県出身なんですか?」「地元なんですか?」とよく聞かれるんですけど、出身は群馬県です。大学入学とともに千葉に来ました。

大学では建築の勉強をしていました。

そのまま建築の道に進むつもりではいたのですが、いざ進路を決めるっていうタイミングで、「自分がなぜ建築学科に進んで、この4年間何を学んで、何に心ひかれたのか」ということを振り返る機会がありました。

そのときに、「形をつくるというよりは、人の暮らしにダイレクトに関われる仕事をしたいな」と思いまして、急きょ方向性を変えて、卒業後はまちづくりなどを行う企画プロデュースの会社に入社しました。

まちづくりにも色々ありますが、私が入社した会社が取り組むまちづくりは、いわゆる賑わいづくり、例えば観光地や駅前広場などをプロデュースする会社。ボスにくっついて、日本各地いろんな土地に行きました。

自分がやっていることは、街の人の暮らしをハッピーにしているのか?

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そういう仕事をしている中で、だんだん自分の中にモヤモヤしてくるものが出てきました。

このモヤモヤは何だろう?と自分で考えながら、私が建築ではなくまちづくりの道に進んだのは、もっと日常の「あたりまえ」な毎日に関わり、より良くしていきたいな、という気持ちがすごくあったことを思い出して。

「地域の賑わいづくり」というのは、地域のためにすごく必要な仕事だと思います。ですが、自分が思い描いていた仕事と、自分が今いる場所にすごく乖離があるなと思いました。

あとは、いろんな地域を回っていて気づいたのが、地域の方々に話を聞くと、「どんなことをやってくれるんですか」という他力本願なコメントが多かったり、「こんなことしてほしい、あんなことしてほしい」っていう、要求ばかりだったりすることでした。

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地域にはいろんな方がいて、いろんな意見が自分たちの中に集まってくるのを聞いていても、「自分たちがこの意見に対して、何をしたらいいんだろう」と思うようになってしまうこともありました。

ときには、地域の方とお話しする機会をなかなかいただけずに、行政の方とお話しして「こんなことしよう」と決まってしまうこともありました。

そういうことにも、すごくモヤモヤしていました。

そんなとき、「自分がやっていることは、まちの人の暮らしをハッピーにしているのか?」と思いました。

もちろん、観光地が元気になるとか、地域に外の人が入ってくるようになるというのは、すごく大事かもしれません。でも、いまそこで暮らしている人たちの暮らしに直接アプローチできている感覚がなかったんです。

日々の生活はもっとクリエイティブにできるはず

で、とあるとき、海外視察に参加させていただく機会をいただきました。いろんな開発の事例だとか、大きなプロジェクトを見て回る合間に、こういうシーンに出会って、「ああ、いいな」と思ったんですよ。

 

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※写真提供:西山芽衣

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※写真提供:西山芽衣

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※写真提供:西山芽衣

こういう人たちの、その街で暮らしている姿をみたときに、「暮らしって誰かがつくってくれるものじゃないんじゃないかな?」みたいな疑問が私の中でわいてきました。

自分たちも、仕事の中で、その地域の人たちの暮らしを「つくってあげる」という気持ちでいたような気がするし、逆に地域の人たちも、新しい暮らしや街をつくってくれるという期待を、外部の人にしていたんじゃないかなと。

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でも、視察で彼らの姿を見て、暮らしって自分たちの手の中にあるもので、もしかしたら自分たちで変えていける可能性があるんじゃないかと思ったんです。なので、日々の生活は、もっともっとクリエイティブにやっていけるものなんじゃないか、って思うようになりました。

「街にこんな場所がほしい」「本当はこんな暮らしがしたい」といった意見を、みんなそれぞれ持ってると思うんですけど、なかなか一つのプロジェクトで解決するのは難しい。

私は、欲しい選択肢が目の前に用意してもらえないのであれば、自分たちでつくれるようになればいいんじゃないかな、と思うようになりました。

脱・他力本願な暮らし

「それって、まちづくりなの?」と言われることもあるんですけど、

「自分の暮らしを自分たちの手でつくれる、元気いっぱいの、クリエイティブな生活者たちが街にあふれたときに、良い循環が生まれて、街は活気が出るんじゃないか」

という仮説を、自分の中に立てました。

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私自身も、誰かが変えてくれるという他力本願な暮らしを脱しよう、そのために拠点をつくろうと思ったことが、今の活動のベースにあります。

そして、2014年の春、いろいろとご縁があって、西千葉という街につくったものが、いま私が活動している「HELLO GARDEN」と「西千葉工作室」という二つの場所です。

 

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HELLO GARDEN ※写真提供:西山芽衣

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西千葉工作室 ※写真提供:西山芽衣

この2つはそれぞれ違うカラーがあるんですけど、両方に通ずる根底のコンセプトは、「自分たちの手で、暮らしをもっと楽しくするモノやコトを、気軽に楽しく自分たちでDIYする場所」というものです。

ただ、場所だけあれば街の人が「自分たちの手で暮らしを良くするには」という話ができるようになるというわけではありません。

「場所をつくりりました、はいどうぞ」と投げてしまうのは無責任だと思ったので、まずは自分がその場所でいろいろやってみようということで、運営も自分でやることにしました。
最初の1年は、前の会社とプレーヤーを掛け持ちしていましたが、2014年の末には会社を辞めて、2015年からは完全に西千葉に活動の拠点に移しています。

新しい暮らしの実験広場:HELLO GARDEN

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※写真提供:西山芽衣

1つめの「HELLO GARDEN」というプロジェクト。私たちは、「新しい暮らしの実験広場」というコンセプトを掲げています。

ただの空き地だった場所を少しずつ自分たちで手を加え、みんなの暮らしの中にある「こんなことやってみたい、こんなことできるようになったらいいのに」っていう思いを形にすることができる、何でもできる実験場です。

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今ではこの写真のようになっていますが、実は2014年の春に作業が始まったときには、こんな姿(次の写真)でした。ただの空き地で、置いてあるものとかも、私が大学の先生とかにお願いして、大学のいらないものを色々ともらってきて、即席で場を作るところからスタートしました。

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※写真提供:西山芽衣

モデレーター平賀:まだ茶色い土が広がっていますね。

そうです。空き地として私たちが手に入れたタイミングでは、地面に起伏があって使いづらい状態でした。手で掘ったりとか、雑草を抜いたりとか、そういう掃除みたいなところから活動がスタートしました。

モデレーター平賀:場所をつくるときは、みんな掃除から始めるんですね。

様々な実験をあれこれ挑戦してきた一年目

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やっぱり「暮らし」というものを自分たちの手でつくっていく上で、「食べるものをつくれるっていいよね」ということで、みんなでこの空き地を耕しまして。

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※写真提供:西山芽衣

だれも農作業をやったことないんですけど、見よう見まねで土地を耕し、種をまくところから始めました。いろんな野菜を育てたんですけど、千葉といえば落花生。収穫の時は、「近所の子供たちも一緒にどうぞ」ということで収穫祭をしたりもしました。

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あと、1年目はちょっとふざけたこともやったりしました。

みんなでピクニックをしている時に、自分たちでつくった自転車発電機で発電して電動コーヒーミルをまわしてコーヒーを飲んだんです。すごいエネルギーいるんですよ。コーヒーミルが一杯分のコーヒーをひいたころには汗だくで、すっかりコーヒーとか飲みたい気分じゃなくなってて。笑

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※写真提供:西山芽衣

お酒飲むならおいしいツマミがほしい、ということになって、燻製をやってみたこともありました。

私たちが主催者として体験を提供するだけじゃなくて、近所の方たちが自主的に場を使うようにもなりました。近所のママさんたちがピクニックを始めたり。

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※写真提供:西山芽衣

みんなが好き勝手にここを使って、楽しいな、やってみたいな、ということをアレコレやっていったのが1年目の活動なんです。

で、1年ぐらいやってみて、「やっぱり空き地のままだと色々不便だね」「こんな空間になったらいいのに」みたいな感じで、なんとなく自分たちでも「この場のありかた」みたいなものが想像できるようになってきました。

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私たちはこの場所をずっと実験広場って呼んでるんですけど、「実験広場をアップデートする実験をしよう」ということで、時々遊んでくれる地元の土建屋のお兄ちゃんからユンボを借りて、自分たちで操縦して、HELLO GARDENを整備しました。

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※写真提供:西山芽衣

モデレーター平賀:運転できるんですか?

土建屋のお兄ちゃんが使い方を教えてくれたんです。なので、一週間ぐらいかけて、ちょっとずつちょっとずつ、私たちで土を掻いて、起伏をなくして平地をつくりました。

HELLO GARDENは、実は向かい側が公園で、そこに来る子供たちが見慣れない重機に超テンション上がって、「乗せてくれ!」と言いながら寄ってきて、遊園地みたいになったりもしました。

近所の人たちも手伝ってくれて、つくっていく中で「もっと緑豊かだったらいいね」「木陰だったらいいね」「食事をしたりしたいね」といった意見も出てきました。


あとは、全部ではないんですけど、可能な限り、家具なども自分で作りました。

この家具は、私のパートナーがデザインしてくれたんです。一年間HELLO GARDENを使ってみた経験から、「こういうものがあったほうが、この場所がより良いものになるよね」という感じでフィードバックしていきながら、家具をひとつひとつデザインしていきました。

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※写真提供:西山芽衣

自分たちの生活に落ちている種を拾う:HELLO GARDENの活動事例

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※写真提供:西山芽衣

で、こちらの写真がスタートから2年の状態、2016年の春に、HELLO GARDENは現在の形にパワーアップして、再スタートを切りました。

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※写真提供:西山芽衣

最初に種をまいたときからずっと続けている「実験ガーデン」は、食をつくる実験として今でも続けています。始めてから4年もたつと、いろんな野菜や果物が採れるようになりました。
あと、近所の方が食関係のイベントに関心が高いこともあって、醤油を自分たちで作ってみるワークショップなどもやったりしています。

私たちの活動やイベントの根底にある、「自分たちの生活に落ちている種を拾う」というのを大切にしています。

たとえば、「遊ぶところが欲しい、楽しい休日が欲しい」という意見を束ねて、みんなの持ち寄りで楽しい休日をDIYする「実験的ピクニック」というのを月イチで開催することになったり。
みんなが、いろんなものをちょっとずつ持ってくることで成り立つ会ですが、毎度私たち運営側でテーマを設定しています。


リニューアルしてからは、営業中に小さなドリンクスタンドが出ていたり、本の貸し出しができる本棚ができたりしました。

 

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※写真提供:西山芽衣

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※写真提供:西山芽衣

たとえば「今回はピザをつくるよ」といったら、ピザに乗せるトッピングをみんなが持ってきます。

で、その会をつくるのも参加者みんななので、火起こしや準備なども参加者が全部やって、私たちは基本的に道具を用意するだけ。みんなの持ち寄りを合わせることで、こういうピザ(写真)ができたりとか。

お餅つきをやったときは、餅につけたらおいしそうなものを募集したら、びっくりするような調味料が集まってきて、みんなでおっかなびっくり試して笑ったこともありました。

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※写真提供:西山芽衣

あとは、音楽を勝手に持ってくる人がいて、ちょっと動画で・・・・・・この、ウクレレ持ってる人もハーモニカ持ってる人も、別にアーティストとかではないんです。

自分がウクレレを趣味でやっているからちょっと弾いてみよ〜、という感じで突然しっぽり演奏し始めるんでるけど、そしたら突然他の人がポケットからハーモニカを出して、、、という感じでコラボが始まって。そうすると、だんだん周りにいる人たちが、楽器がなくても歌いながら机を叩いたりしてセッションが始まったりすることもあるんです。

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とても些細なことなんですけど、こうやってみんなで歌ったり飲んだりするだけで、「ああ今日はいい休日だったね」みたいな楽しい休日ができあがっちゃうんです。

そんな様子をみて、「この参加者たちは楽しい休日をDIYしたことになるなあ」と思いながら、私も一緒に隣で鼻歌歌ったりしています。

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※写真提供:西山芽衣

あと、「若者が楽しめる場所がないよ」という声も多々あるまちなので、自治会とギブ&テイクな関係をうまくつくって、年に一回のDJイベントも開催しています。自分たちだけでは、こんなイベントはなかなか住宅街のど真ん中で開催できないんですよね。

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※写真提供:西山芽衣

隣の公園で盆踊りをやるタイミングで行うので、その名も「ボンオドリナイト」っていう名前。HELLO GARDENはけっこう狭いんですけど、そこに200人ぐらいの若者たちが集まってきます。留学生たちもこんな風に浴衣を着て楽しんでくれるんです。

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※写真提供:西山芽衣

こういう感じで、HELLO GARDENはイケイケなDJイベントで、道路を挟んで反対向くと昔ながらの盆踊り。体の向きを変えるだけで、両方味わえるし、どっちの空気も楽しめるイベントなんです。

「大きい画面で映画が見たい!」っていう映画好きたちが集まって、好きな映画をみんなで見る屋外映画上映会をやったりもしています。

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※写真提供:西山芽衣

自分のペースで働ける仕事をDIYする:ハローマーケット

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※西山さんのスライドより抜粋

最近HELLO GARDENで一番力を入れているイベントが、「HELLO MARKET」です。

好きなことでお金を稼ぎたいとか、融通が利くアルバイトがないとか、主婦の方が子育てと両立して働ける職場がなかなか無いという意見もあって、「自分たちの好きや得意を活かして、自分のペースで働ける仕事をDIYする」という実験をするイベントです。

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※写真提供:西山芽衣

そういった仕事をつくってみたい、「小商い」にチャレンジしたい人だけが出店できるスタートアップイベントです。

主婦の方がパンやクラフト作品を販売したり、普段はお勤めしている人が週末だけコーヒー屋さんをやったり。中にはいつか自分のお店を開きたいという夢がある人もいます。ただ出店するだけでなく、「売上を伸ばすには」「お客さんにもっと来てもらうためには」「自分の世界観をブレずに表現するには」など、ステップアップしていくための試行錯誤を、みんなで情報共有しながらやっています。

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※写真提供:西山芽衣

このマーケットが、色々な人のライフスタイルの選択肢をつくっていくきっかけの一つとなったらいいな、と思っています。

みんながアイディアを持ち寄ることで成り立つ

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HELLO GARDENは、一見わたしたちが全部イベントを企画しているようにも見えるんですけど、実際には、様々な人がイベントのアイディアを持ち寄ることで成り立っています。

使い方はどんなことでもいいので、「やってみたいことやってみませんか」という投げかけをして、ファッションショーが実現したり、古本市が実現したり。いろんなイベントを企画する人がたくさん出てきて、「みんなの実験場」という雰囲気がここ最近ぐっと出てきました。

モデレーター平賀:BUKATSUDOには「これからの本屋講座」という講座があって、それを受講した吉田さんという方が、こちらの「西千葉一箱古本市」を始めました。

そうですね、すごいたくさん人が集まって。

モデレーター平賀:私も、ちょうどこの写真のときにいました。すごくにぎわっていて、びっくりしました。

自分が作りたいアイディアを実現させる場所:西千葉工作室

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※写真提供:西山芽衣

「西千葉工作室」は、街のみんなでシェアするものづくり工房です。

ものづくりをしたい人が教えてもらう教室ではなくて、「自分がつくりたいアイディアを実現するための、道具と場所を貸してもらえる場所」と思ってもらえばいいかなと思います。

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※写真提供:西山芽衣

アナログなものからデジタルなものまで、本当にいろいろな道具があります。

3Dプリンターがあったり、電子工作ができるツールがあったり。あとは木工ももちろんできます。ミシンなどもあり、いろんなものがつくれる設備を整えています。

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※写真提供:西山芽衣

こういう道具や場所があることで、新しいものをつくるだけじゃなく、壊れたものをなおす、不用品などを実用的なものにつくりかえるというのも、選択肢にあがってきます。西千葉工作室では、「つくる」「なおす」「つくりかえる」という3つのものづくりを通して、新しいライフスタイルを創造したり、日常をもっと楽しくするを目指しています。

 

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※写真提供:西山芽衣

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※写真提供:西山芽衣

 

どんな人が来るかというと、例えば、あるご家族は「裏の庭に生えていた木を伐採したんだけども、捨ててしまうのはもったいないから、家族で使えるコースターをつくりにきた」とか、娘さんのためにキッチンセットをつくりにきたママさんがいたり、自分の家にピッタリ合う収納棚をつくりにくる人もいます。

それから、春はお子さんの入園グッズをつくりに来るママさんたちもたくさんいます。今は家にミシンを持っていない方も多いようです。

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※西山さんのスライドより抜粋

いつも洋服を汚してしまって困っているという女性は、「汚れて良い」というのがわかりやすいように、「汚れても良い服」という印をシルクスクリーンでプリントしていた方もいました。

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※西山さんのスライドより抜粋

西千葉工作室には子どももたくさんくるのですが、この子がつくったものが私の一番お気に入りなんです。みなさん、見てみてください。(動画が流れる)

この子、卓球部なのですが、「部活の中だけじゃ強くなれないから家で特訓したい」ということで、電動の配球マシーンをつくりにやってきました。

西千葉工作室を訪れる人が、みんながみんな、ものづくりの経験がある方たちではありません。むしろ初心者の方のほうが多いくらいですが、こうやって、お客さんはつくりたいもののアイデアをもってきてくれるので、それを実現するには、どんな工具、どんな素材をつかって、どんなふうにつくったらいいかを一緒に考えてサポートすることが、西千葉工作室のスタッフたちの役割なのです。

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※西山さんのスライドより抜粋

あとは、「モノをなおす」っていう事例で、金継ぎという技法で割れた器をなおしたり、壊れたヘッドフォンの配線をなおしたりする方もいます。自分が着なくなった洋服を持ってきて、カメラバッグをつくる方もいました。「つくりかえる」の事例では、今の時代なかなか使わなくなってしまい、押し入れの置くに眠らせていたオーディオコンポをバラして、Bluetoothスピーカーにつくりかえる、という方もいましたね。

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※西山さんのスライドより抜粋

さらに、いろいろなものをつくれるようになるために、工具の使い方の基礎を学ぶワークショップや、イラストレーターというアプリケーションの講座など定期的に開催しています。イラストレーター講習受講者の方々は、レーザー加工機などのデジタルファブリケーションをつかうためという、ものづくりが目的の方もいれば、「イベントの企画をしてみたくて」「NPOの活動をしているから、広報用チラシをつくるために」「自分でつくったアクセサリーを売るのに、ショップカードやパッケージやディスプレーをもっと魅力的にしたくて」など、ご自身の活動やライフスタイルをアップデートするために、こういったスキルを身に着けにいらっしゃる方もいます。

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※西山さんのスライドより抜粋

先ほどの「ハローマーケット」の出店者の中にも、自分のお店をもっといいものにアップデートしたいということで、お店の看板を工作室につくりに来る方もいます。

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※西山さんのスライドより抜粋

あとは、もっとモノづくりの楽しさを知ってもらうために、ヘボいロボットをつくって戦わせる、技術が乏しい人限定のロボットコンテスト「ヘボコン」というのをやって盛り上がりました。

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※写真提供:西山芽衣

物をつくることを通じて、自分のライフスタイルをつくりだす

実は西千葉工作室でつくられているのは、ものだけじゃないんですね。

西千葉工作室に来た地域の人たちは、いま会員が1,800人ぐらいいます。下は3歳で、上は90歳ぐらいまで。

彼らはモノをつくることを通じて、自分の「ライフスタイル」をつくっています。例えば、こんな家でこんな暮らしをしたいと思ったときに、そのために必要なものをつくったりとか。

また、つくるなかで「こんなものが作れた、自分はこんなことができるんだ」と自ら「自信」をつくってもいます。

または、モノをつくるのが得意なは、それを活かしてだれかに教えたり、作ったものを売ったりして、「仕事」を生み出したりもしています。

イラストレーター講習の受講者もそうですが、スキルが身につくことによって、活動の幅を広げる人もいて、それが地域の活気につながっていくというもの、西千葉工作室が地域にある意義の一つだと考えています。

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※写真提供:西山芽衣

西千葉工作室は、地域に暮らす約30人のスタッフのおかげで、運営が成り立っています。

スタッフたちは西千葉工作室に関わることを通して、「自分たちで場をつくる」っていうことにチャレンジしています。中には、エンジニアの仕事をリタイアした後、今までのお仕事の中で培ってきた技術を活かして、いろんな人のものづくりに関する相談を受ける先生をやってくれるよう方もいます。

チャレンジと実験を通して、街をハッピーにしてゆく

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※西山さんのスライドより抜粋

HELLO GARDENと西千葉工作室は、一人一人のチャレンジと成長をメインにしています。一人一人の暮らしの実験をたくさん行っていく中で、街がハッピーになる副産物がたくさん産み出すことができました。

私たちの活動は、よくコミュニティスペースですかと聞かれるのですが、実は、コミュニティをつくろうと思って今の活動を始めていないんです。結果として、コミュニティ形成につながっていた、というだけ。

また、知らず知らずのうちに子供の教育に寄与できている部分がったり、ご年配の方の居場所になれていたり、共通の興味を通じて世代や国境を超えた仲間ができたり。

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※西山さんのスライドより抜粋

自分たちが楽しくてやっているだけだけど、そこから地域の中に賑わいが生まれていたりします。このまちをどうしよう、とか大きなことを考えなくても、こうやって一人一人の活動や地域での試行錯誤から、暮らしが変わっていくこともあるんじゃないかなと、今の活動を通じて改めて思っています。

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※西山さんのスライドより抜粋

これからは、私たちの活動が、西千葉という地域に留まらず、日本中世界中の人に、ヒントとして届いたらいいなと思って、その方法を模索中です。

最近プライベートでは団地に引っ越して、懲りずに今度は団地というまた特殊な場所に向き合うことになりました。

団地に住みながら、「これからの団地のあり方」「団地ならではの暮らし方」みたいなものを考えながら、いろんな人に団地に遊びに来てもらったり、団地の人と交流することで団地を考えるというのも、ライフワークとしてやっています。

以上です。ご清聴ありがとうございました。

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※西山さんのトーク内容ここまで。

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「日々の生活はもっとクリエイティブにできるはず」という思いから始まった、「HELLO GARDEN」と「西千葉工作室」という2つの実験の場。ここから生まれるさまざまなチャレンジや実験に、ぜひ参加してみたいですね。

「HELLO GARDEN」「西千葉工作室」は、西千葉に住んでいなくても利用可能とのこと。気になる方は、この場所を使って自分のアイディアを実現してみてください!
HELLO GARDENについてはこちらから。
西千葉工作室についてはこちらから。

次回予告

次回は、特定非営利活動法人シブヤ大学の青木優莉さんの登壇レポートをお届けいたします。

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取材・撮影・構成・レポート記事:佐野匠